現地採用とは?海外駐在員とは何が違うの?
ここでいう現地採用とは、海外現地での日系企業で雇用されて働く日本人のことを指します。海外現地の企業の本社で働く日本人は本社採用です。いわゆる『現地採用』とは、海外現地日系子会社採用と言い換えた方が的確です。一般的に言われる現地採用とは、ほとんどの場合この意味合いです。そして、最も避けるべき雇用のされ方です。私はアメリカで現地採用、そしてインドでは本社採用、そして日本で本社採用として働いて、アメリカ駐在もしていますので、海外で働くということに関しては物事の両面を見てきました。絶対に避けるべきだと声を大にして言い続けます。現地採用は物事の全てにおいて、搾取され続ける、最も割りの合わない雇用形態です。
現地採用と本社採用(海外駐在)の間にある超えられない壁
現地採用と本社採用の間には、高い高い壁が存在します。現地採用は、子会社採用なので本社より待遇が良いことはまずありません。これは日本に限らず、世界共通です。この点が、海外だとか駐在だとかいう言葉に惑わされて、何故かあまり注目されていない物事の本質であり、大事なポイントです。本社からしてみれば、所詮は子会社であり、中枢機能のある本社から物理的にも精神的にも離れた存在であることが多いです。同じ国内においても、子会社の待遇が、親会社の待遇を上回ることは稀でしょう。良くても、親会社と同程度の福利厚生が受けられる程度です。給与水準は下回る場合が多いです。
本社採用の中から、子会社へのヘルプやパイプ役として送り込まれるのが、駐在員です。会社都合の転勤であるため、様々なコストが会社持ちです。また、従業員を守るために日本に居た頃と同等の生活レベルを保証しようとします。それが様々な手当てとなり、会社側からの手厚い手当てを受けられるのが駐在員です。
どちらが優秀だとか、現地に精通しているとかそういう問題ではないのです。雇用形態と求められる役割が異なります。ただそれだけなのです。駐在員に発行されるビザは、管理職としての就労ビザです。
ということは、出来る限り本社勤めをすることが、資本主義で生きるサラリーマンとして収益を最大化させるための本筋、最初のステップになります。しかしながら、これを外国人が行う場合は、そこにいる優秀な現地人と競う必要+就労ビザのハードルがあります。例えば、外国人が日本本社で日本人と1つの採用枠を争う場合。例えば、日本人が海外で現地人と現地本社の1つの採用枠を争う場合。
企業からしてみれば、能力が同じであれば、就労ビザのサポートが不要な人材を選びます。外国人を雇うことは、リスクもコストも比較的に大きいのです。また、わざわざ外国人を雇う必要が無い場合は、日本語も強みになりません。
海外で働くには一にも二にもまず就労ビザが大切なのですが、そもそもビザサポートをしていない企業が多いです。留学生の中でも優秀な方たちは、現地で現地本社企業に就職するか或いは日本で外資IBやコンサルなどに就職します。引く手数多です。
海外で働きたい人には、日系企業が入りやすい。後悔先に立たず。
海外で働きたい、を最優先する場合に登場するのが、海外現地にある日系企業です。日系企業はその名の通り、日本企業の子会社です。日本から進出してきて、現地でビジネスを行っています。現地では必ずしも日本語は必要とされませんが、社内、親会社とのやりとり、そして他の日系企業とのビジネスがある場合は日本語が話せることは強みになります。特に製造業の場合は、メーカーにサプライヤーがくっついてきて、さらにそのサプライヤーがくっついてきてと、裾野が広いです。日本からの出張者や駐在員も多いです。未だに多くの主要ポジションを日本からの駐在員で賄っています。
駐在員の中にも、英語が話せない方はかなり多いです。技術系の方は特に、技術のために駐在しているのであり、英語力を買われて駐在しているわけではないためです。そのため、日本語が話せる人材に対して需要があります。また、語学だけでなく日本的な仕事の進め方も出来る、バイカルチュラルな人材に対しての需要があります。そのためビザサポートを行う案件がちらほら存在するのです。
海外現地で就職を目指すことも出来ますし、日本から海外現地の門を叩くこともできます。ただ、ビザサポートがあっても、就労ビザが取得できるかどうかは確かではありません。泣く泣く帰国することになった人の数は知れません。
ここに、落とし穴があります。就労ビザは首輪なのです。私は適当に就活してノリで決めてしまったため、火傷をしてから反省するタイプです。。。
悲惨な現地採用、就労ビザで釣られる
アメリカでは、4年生大学を卒業すれば学生ビザのままOPTという制度で1年間就労することが許されます。つまりビザサポートが不要です。しかし1年後には就労ビザが必要になりますので、働きながら同時進行でビザの準備をする必要があります。大体、大学卒業(5月)後の年末くらいから、翌年4月1日のH1Bビザの申請準備を始めるのが一般的です。私もこのケースでした。
当時のH1Bの申請状況は、現地での生き残りを賭けるには過酷な状況でした。申請開始日の4月1日には発給予定枠の65,000枠が即日で埋まりました。発給枠の数倍が申し込まれます。全てを審査するのは非効率であるため、まず行われるのが抽選です。つまり、どんなに発給見込みの薄い申請でも、絶対に安心して発給がされるべき内容の申請でも、ふるいにかけられてしまいます。完全に運です。
先輩や同期が、『抽選に通らなかったため』、実際に泣く泣く帰国していきました。私の場合は、運良く、抽選を通ることが出来、そして無事に就労ビザの発給もされたのでした。
申請から発給可否の結果が出る期間は人それぞれです。結果が出るまでには数か月間掛かります。この期間は非常にストレスフルです。何せ、荷物をまとめて即出国することになるかもしれませんし、彼氏や彼女が居れば別々の道を歩んでいくことになるわけです。その国に居る権利そのものが消滅してしまいます。彼氏や彼女がいなくたって、自分ではもうどうしようもできず、天命を待つのみです。数か月先の海外引越の可能性を秘めながら生活しなければなりません。また、転職活動をする必要も出てきます。全てがリセットされてしまいます。
現地採用希望者が確保するべき最初で最大の難関が、ビザサポートです。現地採用希望者は、『現地に住む、残る』ことが主目的の場合が多く、給与やその後のキャリアの詰み方よりも、ビザに目がくらむわけです。ルアーだと分かっていても、噛みついてしまう。そういう現地採用希望者が山のようにいます。
アメリカにおける就労ビザ申請の実態
就労ビザは優秀な人材のため
就労ビザというものは、国内の人材では賄えなかった優秀な人材に発行されるものであるため、給与も一般的なレベルよりも高く設定される必要があります。特定の土地、特定の職種で一般的な給与レベルが定められており、それを下回ることは許されません。ですが、高い給料を払いたくないのが日系企業。中小企業は大体ウソをついています。私もこのケースでした。本来私の職種はセールスでしたが、当時私のいたニューヨークシティでセールスとなると、給与レベルが跳ね上がります。新卒にそんな給料を絶対に出すことは無いのが日系企業です。会社からのビザ申請書類上では、異なる職種で申請が行われていました。なんじゃそりゃ。。。これは私の知る限り、様々な日系の中小企業で行われていました。残念ながら、現在も行われていると思います。
また、優秀な人材のためですし、ビザの申請費用も会社が負担することが法律で義務付けられています。ここでも日系企業はずるをすることが多いです。幸いにも私はこのケースではなく、きちんと会社が払ってくれました。当たり前のことなのですが、それを当たり前に守ってくれる会社は少数派です。
多くの悪徳日系企業は、会社が立て替えて法律的な体裁を整えた後、後で天引きなり別の方法で現地採用から3,000ドルくらい徴収します。そんな会社に勤めるような現地採用は、そもそもお金が無いというのに。。。そもそも新卒ですし。。。
ですが、せっかく徹夜に継ぐ徹夜で必死に頑張って現地大学を卒業し、せっかく合法的に働ける権利があるのですから、その権利を享受したいと思うのは普通のことです。ただ、そうやって都合よく使われる現地採用が増え続けていることもまた事実です。
悪質なところでは、OPT終了後のビザサポートをするという約束で入社させ、使うだけ使った後に、やっぱりビザサポートしません、という手口を毎年やっている会社もありました。アメリカの日本人には比較的有名な旅行代理店がそうでした。ビザサポート無しに大量にバイリンガルの新卒を雇うことが出来、業務内容も簡単で、しかも毎年入れ替わる。
他にも、ビザは取ったけれども、その通りの待遇を支払わない会社もあります。現地採用からしてみると、ビザ=その地に存在する権利であるため、都合よく使われるしかないのが残念な日常です。
H1-Bビザのその後
H1-Bビザからグリーンカード(永住権)へ
ただ、H1Bビザの先に可能性としてあるものは、ビザ延長後の永住権申請がありえます。優先カテゴリではないため、さらに5年6年かけて社畜道を邁進するはめになります。晴れて永住権が取れれば、晴れて自由の身、お役御免です。OPT(1年)から始めてH1B(6年)、そしてその最中に永住権を申請し始めて、ケースバイケースですが5年とか8年とかかけて永住権の取得につながります。つまり、運が良ければ働き始めてから最短10年くらいで、ようやく存在の不安定さを取り除くことができるようにします。
永住権さえあれば、明日クビを宣告されても、マクドナルドでバイトして食べつなぐことが出来るのです。H1Bで居続ける限りは、常に強制海外引越の可能性を捨てきれません。
H1-BビザからE2ビザへ
他に多いのは、E2ビザへの鞍替えです。管理職扱いとなります。会社によってはこのやり方を多用し過ぎて、マネージャーばかりの組織体制となっているところも多いです。E2は、5年更新ではあるものの半永久的に滞在・就労することが出来るビザです。現地採用でも、ビザの扱い上は日本から派遣されている体になります。Lビザと異なり移民局ではなく会社審査の色が強いビザですので取りやすいです。悲惨な現地採用ビザ
最も悪質なのは、日本からのアメリカ現地就職を狙う組への扱いです。J-1ビザ、通称Jビザを使用して研修・インターン扱いで1年間、使い倒します。多くの日本人は、海外就職、アメリカでキラキラ輝く私!を想像してこの制度を利用します。様々な人種とともに働く私かっこいい!的な妄想を膨らませて、インターン斡旋業者に数十万円支払って無償労働を提供することになります。無償でもいい、安くてもいい。なぜなら貴重な体験を積めるから(キラキラ)。というのは妄想に過ぎません。ちょっと考えればすぐ分かります。現地語も、まともな(更新不可能な)就労ビザも無い、海外から突然やってきた素性も分からない人間を、誰がインターンとして迎え入れるでしょうか。
答えは簡単です。無償で働いてくれる人間が欲しい、日系企業です。そのような日系企業では、他の日系企業相手への営業や、単なる雑用をさせられます。こういうことをするのに、お金を数十万円支払うのが、J-1制度を利用したインターンです。相当の雑草魂が無いとやっていけません。基本的に、J-1から転職して現地で就労ビザをゲット!というのはありえません。そのような道筋を斡旋業者が提示してきたら、詐欺ですのでご注意下さい。
そのようなインターンを求める日系企業へは、自力でJ-1取得するくらいのバイタリティが無いと、行くだけ無駄です。ただの遊びになってしまいます。それでもいいのであれば是非。
ニューヨークの日系企業現地採用の場合
私の場合は、例のOPT(学生ビザのまま1年間就労できる状態)からH1Bを無事に取得し働いていましたが、ある日会社からクビを宣告され、切られました。若気の至りで、自分が居なければ会社が回らないくらいに調子づいていたのが原因です。私が100%悪いのですが、とはいっても、現地採用は腐りやすい環境にあると思います。クビになった当時の話はこちらからどうぞ
サラリーマンなら、海外駐在のすゝめ➃
なぜならば、それは将来が暗いから。都合よく使われ、キャリアパスの限界は見えていて、突然来た駐在員がはるか雲の上の生活をしている様を目の当たりにすると、絶望してしまいます。なんならその駐在員の奥様が駐在妻ライフを満喫していたりするのを目の当たりにすると、殺意すら湧いてきます。
ニューヨークでは、地上で一人暮らしするためだけでも1,000ドルは必要です。1ドル110円なら11万円くらいです。洗濯機無しで、冬の間のお湯もちゃんと出ません。常にカツカツの状態でした。自分が海外駐在員になってみて分かったことですが、駐妻の中には、『ウォルマートは値段だけじゃなくて客層も品質も低いから、買い物はトレジョかホールフーズ!リピ決定!』という方も一定数いるようです。一定数います。他人様のお金の遣い方には興味ないのですが、客層も低いと言われると少し悲しい気持ちになります。ま、実際に低いんですが汗
当時、辛ラーメンをダース買いしたり、中華街で肉まんの、まん、の部分を大量購入して生活していた私は、全てを周りのせいにしながら腐ってしまいました。今でも、あまり駐妻は好きになれません。全てを中断させられ、会社都合で来ているのは頭では分かっているのですが。昔のトラウマでしょう。駐妻は一切悪くありません。ただの僻み全開君です。かっこ悪い。「自分のした苦労を皆もするべき、あいつは楽しやがって」という深層心理が昔は強かったのだと思います。
今になって思えば、周りなんてどうでもよくって、状況改善のために自分ができることをすれば良かっただけの話なのですが、大学を頑張った自負が強かったことと、まだまだ酸いも甘いも分かっていなかったため、入社後のギャップに打ちのめされてしまいました。
それくらい、お金がないという状態で心がすさんでいました。
余談ですが、ニューヨークには色んな人がいます。
10年以上オーバーステイしている人もいました。日系企業の違法バイトくらいしか出来ません。ピアノバーと呼ばれる日本人キャバクラもあります。ほとんどが語学学校生です。日本食レストランでバイトしている日本人は、就労ビザなんかありません。語学学校生だたったり、ビザウェイバーだったり。とにかく、統計上の表には出てこないアンダーグラウンドな人間が数多く居ます。そしてそれは日本人だけでなく、世界中から様々な背景を抱えた人間が集まってきます。
彼らは、それこそ現地の待遇レベルを引き下げている張本人たち。過剰供給を作り出している人たちです。応援は出来ません。彼らは自分の首だけでなく、そこにいる全外国人、そして現地の人の首も絞めていることを無視し続けます。
国籍って難しい。
海外で働くときに知っておくべき、待遇ヒエラルキー
さて、待遇というものは、仕事が出来る出来ないではなく(重要)、どの企業にどのような形態で採用されているか、によって決まります。待遇ヒエラルキーという言葉をあえて使わせてもらえば、海外駐在員がダントツです。
次点に日本本社。
次点に海外現地ローカル。
最後に海外現地採用。
偉い偉くない・仕事が出来る出来ないは関係ありません。これが待遇の優劣順位です。海外現地ローカルは、ビザサポート等の負担が無いため海外現地採用よりも給与が高いことが多いです。
どうしてもその場に居続けたいなど特別な目的が無い限り、日本人として海外日系企業に現地採用として勤めることは、正しくない選択肢です。サラリーを稼ぐのに、最も非効率なやり方です。
海外駐在を目の敵にしている現地採用は多いですが、多くの場合は他人への僻み、羨みであり、自分自身がそのポジションに甘んじている事実を受け入れようとしません。他人の待遇、しかも異なる会社に籍を置く人間の待遇と自分を比較すること自体がナンセンスです。嘆くのではなく、行動に移しましょう。
キーワードは、本社採用です。海外でも日本でも構いません。本社採用は強いです。子会社採用は、残念ながら弱いのです。同じ細胞なら、爪ではなく脳になるべきです。
現地採用の言い訳としてよく挙げられるのが、現地採用は自分で場所を選べて、好きなだけ居られる、というもの。これは間違いです。永住権以上の場合は正解ですが、先述の通り、ビザが安定しない場合は非常に不安定です。
場所は選べても、そこで働き続けることが出来るかどうかは別の話です。それに、海外駐在員も場所を選べますし、ずっと居たければいることも出来ます。事実、私の場合はアメリカを選んで来たわけですし、3年や5年などの赴任期間の無い、片道切符の駐在というのも私以外にも実際に存在します。
また、海外駐在から現地採用への鞍替えは良く聞きます。現地に残りたい場合の有効な手段ですが、現地採用から海外駐在への鞍替えは聞いたことがありません。私も直接の鞍替えではなく、遠回りをして海外駐在を実現しています。
海外駐在員を責めるのはナンセンス。変えるならシステムではなく、自分自身
多くの海外駐在員は、現地採用の気持ちが分からないと思います。ですが、分かることを期待する方が間違いです。経験しなければ分からない苦難が多過ぎます。また、不必要なプライドが高い駐在員がいるのも事実で、管理職として赴任していることをいいことに、人間としても偉いという勘違いをしている方もいらっしゃいます。私はそんな駐在員が大嫌いです。反吐が出ます。私も現地採用だったとき、当時の駐在に当り散らしていました。
ですが、システムは自分では変えられません。変えられるのは、自分だけです。
現在、私は海外駐在員としてアメリカで働いています。会社のおかげで不自由の無い生活を送ることが出来ています。現地採用の頃とは異なる職責があります。いわゆる現地と日本の板ばさみです。
ただ、今私がこうして駐在員としてのメリットを享受できているのも、なんとか仕事をこなしていけているのにも、過去の自分があったからです。現状を一瞬で変えることは出来ないけれども、向いている方向を変えて一歩を踏み出すことはすぐに出来ます。
私の場合は、嘆くのをやめて、自分自身が駐在員の恩恵を受けることを目標にしました。やりがいは二の次。もらえるものもらうために働く、というのは家族を持ってから生まれた信条です。サラリーマンである以上はサラリーを最大化するべきという当たり前のことに、遅ればせながら気づけたのも、搾取され続けた経験があってこそです。サラリーマンとして、譲ってはいけないラインを学びました。
全ての留学生、そして現地採用で働いている方、そして日本脱出を考えている方たちに伝えたいです。その行動力を、しっかりマネタイズしないともったいないです。共に頑張りましょう。
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