駐在員は見た!現地採用が知らない、ある日系企業海外駐在の闇


元現地採用・現在海外駐在員の選択のすゝめです。本日は、海外駐在の闇を紹介します。

現地採用とは何が違うの?海外駐在とは?

ここでいう海外駐在とは、日本の本丸で雇用され、海外現地での日系企業に送り込まれて働く日本人のことを指します。海外で働く日本人には、様々な雇用形態があり、そのうちの1つです。1つは海外駐在員。上述の通り本国から海外支社へ派遣されるパターン。2つ目は現地採用。海外支社で直接雇用されるパターン。3つ目は本社(海外)で直接雇用されるパターン。同じ系列で見られがちですが、日本にある外資系は全く別物です。上記パターンで言うならば、2つ目の現地採用です。日本にある外資系は、海外にある本社から見れば海外支社に過ぎません。アジア・パシフィックの傘下だったりします。

私はアメリカで現地採用、そしてインドでは本社採用、そして日本で本社採用として働いて、そこからのアメリカ駐在です。そのため『海外で働く』という物事は上記パターン全てを経験し、良い面悪い面見てきました。

とにかく、王道は1番目の海外駐在員。間違いなく最短距離ですし、日本にいる日本人に取って一番再現性の高い方法。且つ、おいしい。一番気をつけるべきは、海外支社での現地採用。全ての面において、一番割に合わない雇用形態です。

本社採用と現地採用の間にある超えられない壁、については『海外で働きたい人が夢見る、あるアメリカ日系企業現地採用の闇』で詳しく触れています。今回は、駐在員側の闇に触れていきますので割愛します。

地方の製造業の海外駐在の実態

本社本丸から、子会社へのヘルプやパイプ役として送り込まれる駐在員。会社都合の転勤であるため、通常様々なベネフィットがあります。が、会社都合ということは家を買おうが、本家だろうが関係なし。奥さんのキャリア?友達?会社は知ったこっちゃないというのが悲しい現実です。会社都合で、世界のどこかへ飛ばされるのです。それまでの全ての生活にピリオド。これを希望するか、いやいや行くか、というのは個人の受け取り方の問題ですので、どうせなら全力で楽しむスタンスの方が良いです。

日本語は島国日本でしか通じないため、海外=外国語、異文化ということになります。法律からゴミ捨てまで何から何まで異なります。ですが、パイプ役、橋渡し役である海外駐在員という性質上、片足現地片足日本、より正確に表現するなら、文字通りブリッジで両手が日本、両足現地的な働き方が求められたりします。ブリッジでその場をグルグル回る感じでしょうか。

海外現地は大体カオス。カオスじゃない部分の方が少ない。

現地はカオス、さらに守ってくれる組合も無い。帰らない先輩。自分も帰れない。定時終了後から始まる会議。現地と日本で両方で根回し。朝6時まで働く駐在員も少なくありません。日本は有給とりにくいが、祝日が多いです。海外は逆で、有給は取りやすいが、祝日が少ない。これが海外駐在員だとどうなるかというと、有給取りにくくて祝日も少ない、という状況に陥ります。さらに、少ない休みも休日出勤、付き合いのゴルフ、麻雀などに費やさなければならない、なんて方も沢山いらっしゃいます。奥さんはといえば、慣れない海外で育児含めワンオペです。ただでさえ忙しくしている旦那さんがかわいそうです。労ってあげようと日本食を作ろうにも、日本食材は舶来品ですので品数も豊富では無いし、味も落ちます。中には賞味期限が切れていたりするようなお店さえあります。それでも、日本よりも高いのです。輸入品ですので。

そして、一応3年とか5年とかと言われていたりするのですが、これが確定ではありません。未来のことですし、会社のことですから短くも長くもなりえます。人生プラン?よくわかりません!1、2年後に世界のどこにいるか検討もつきません!という方が結構多いです。海外在住というのは納税も現地ですので、資産運用含めてプランニングは難しいです。

さらに、現地には似たような海外駐在員が沢山います。ここが危ないです。よく聞くのが、お昼は駐在員で一緒に食べる 、さらには一緒に外食というパターン。夜も皆で飲んでから、など。特殊な状況であるため、変な連帯感を持っている方が多いです。そのためか、公私混同という言葉が可愛く思えるくらいの過度な交流を当然のように求める方もいらっしゃいます。ただでさえ少ない自分の時間、過ぎ去る時間、空間を埋める愚痴。上司によります。本当に上司によります。こういう会社に入るときついでしょうね。土日も一緒だったり。もう最悪です。

海外駐在員は、ザ・中間管理職

日本と海外現地のブリッジである海外駐在員。これは親会社と子会社の間に立つ中間管理職。現地社員からは待遇の面で一線を画しているため、幸か不幸か、駐在員のシステムをよく知らない方からは嫉妬と中傷の憂き目にあったりします。会社都合で飛ばされて使い倒される中間管理職なのに、現地からしてみればなんでそんな待遇!?となるわけです。会社都合で飛ばされたら誰だってその分の補償は欲しいです。それまでの全てをぶった切られるわけですから。家族全員。なんなら家族分断だってありえる。体調、受験、介護、などなど様々な要素があります。会社都合で人を動かすなら、せめて金銭的な損をしないように、というコンセプトです。できる限り日本勤務じと同じ状態を維持できるようにと。

ですが、そんなの現地の人は知ったこっちゃありません。

『え?!なぜ??日本から来たあいつが?俺より若くて英語もろくに喋れないのに?え?え?え?年収15万ドル??家賃が2000ドル会社持ち?子供の学費も?車も?え???』となってしまうわけです。

現地で日系子会社に直接採用されている人は、良くて10万ドルです。日系だとトップポジションまで行かなければ、10万ドル以上行くことはほぼ無いでしょう。ポジションにもよりますが5万ドルから9万ドルの収まりが良いようです。ちなみにこれが都市部になり需給バランスが崩れると下限が0ドルになります。ただでもいいからNYCで働きたい、ハワイで働きたい、なんて輩が出てきます。インターンという名のタダ働き、使い捨て。だけど企業と海外へ憧れる無知な若者の利害が一致してしまう。明確な目的があるのなら、良いのですが。

現地からしてみれば、どんな事情であれ海外駐在を羨ましく思うのは当然です。これは、能力の差ではなく、比例でも反比例でもなく、単なる雇用形態の違いです。本社本丸に採用されて会社都合で動かされているか、一子会社に直接採用されているかの違いです。海外駐在も、現地採用も海外に出るその時は引越しがあったわけです。生活立ち上げにはお金が掛かります。物価の安い日本と異なり、アメリカは物価が高いです。海外駐在員と現地採用の生活の差はどんどん広がっていきます。オーガニック、なんて言葉を発するのはほぼ駐在員で間違いありません。海外のオーガニックは本当に高いですから。

人間ですから、やっかみはあります。どんなに仲良くしていても、やはり駐在でいる限り、『駐在』であることに変わりは無いのです。線引きを超えることはできません。親会社から来ている人間に対して、PRしている要素は誰にも否定できません。やっかむくらいなら、シンプルに何かコネを作ろうとする方が健康的です。

時に現地からは突き上げられ、頭を飛び越され、日本からは非現実的な指示が来て、そしてその後ハシゴを外されたりします。中間管理職の悲哀です。ですが、中間管理職まで登ってきたからこそ味わえる醍醐味でもあります。


闇は現地採用だけじゃなく、海外駐在員にもある

海外駐在には、これまで挙げてきた負の側面だけではなく、さらなる負の側面があります。それは、健康問題です。これまで挙げてきた数々の負の側面から、ストレスで倒れる方が少なくありません。過労で倒れる、ストレスで倒れるなど様々です。内臓に影響が出る方もいらっしゃいます。現地に馴染めず、食事も馴染まず。

それでどうなると思います?

現地からは人間扱いしてもらえず、日本からは落伍者の烙印を押されたりします。会社都合で転勤しただけなのに。会社に滅私奉公で勤めて尽くしてきただけなのに。そのような形で一度レールから外れてしまうと、戻るのには相当の時間と努力と運が必要になります。記録は消えません。

健康管理は何よりも大切です。健康管理一番しにくいところで、誰よりも健康管理しなければならない。日々テトリスのように降ってくるトラブル。トラブルシュートは非常に長けてきます。

中間管理職ですから常に摩擦熱が発生しています。日系なので評価は減点方式が多いです。失敗の可能性が高いところで、結果を出し続ける。これはとても大変なことです。


選択のすゝめの場合

私は、かなり緩やかな海外駐在を実現しています。非常にラッキーです。参入障壁の高いニッチなメーカーだからこそ、このような駐在ができているのだと思います。現地責任者で、基本的に定時上がりです。日本人は私しかいません。そのためおかしな付き合いもありません。たまに業界の集いに顔を出す必要がありますが、その程度です。日本は、特にメーカーが海外売上を上げたいという気持ちが強いため海外要員の需要は高いですし、駐在できる再現性も高いです。そこを狙い撃ちして転職しました。地方で中小だと、海外要員なんていないんです。その市から出たことも無い人が殆どです。

その代わり、リスクももちろんあります。中小に行くと、その後大企業には行きにくくなります。福利厚生がしっかりしていない会社に勤める意味を、十分に理解してから面接に望むべきです。コーポレートガバナンス?あえて無視するような会社も多いです。ガバナンスが効いていないからこそ、入社して数年程度で海外駐在に出られるのですから、そこはもう受け入れるしかないですね。

私は本当にラッキーだと思います。残業地獄みたいな方、多いですよ。でも、どうせ日系企業でサラリーマンとして働くのであれば、私は海外駐在を強く、強くおすすめします。


海外駐在の闇 結論

駐在する阿呆に現地就職する阿呆、同じ阿呆なら駐在せにゃ損。これです。海外駐在なんてシステム自体が古臭いだとか、ベネフィットが削られる傾向にある、とは言いますが、まだまだ必要な存在です。日系企業だけでなく、海外に支社がある会社は多かれ少なかれ駐在員を皆んな送り込んでます。そして会社都合の転勤は手当が厚いんです。文句言う暇があれば、その波に乗りましょう。


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